DL違法化を考える

巷では話題の的となっているダウンロード違法化問題。様々なところで論議されているが、私もわたしなりには考えていきたい。
必要なことは、DL違法化に反対するなら反対するで、DLの違法化によってどれくらいのデメリット、つまり経済的損失、文化的損失、国家としての損失があって、DL違法化によって保護される権利者のメリットを上回るのか。それぞれを金銭としての価格に直すとどれくらいの価格に換算されるのか。また、そのデータはどれほど信頼性があるか。
要は、法制定による様々な側面や影響を考え、違法化の流れに抵抗するためのロジックをつくっていかなければならない。もう現実味を帯びた話となってきているのだから、マジで考えていかなければ、決まってしまってからでは遅い。
パブリックコメントの反対意見の多さなどに基づく人海戦略も一定の効果はあると思うが、それにプラスαのロジックがないと、感情論の掛け合いとなって時間切れとなり、時間切れは権利者による既定路線、つまり違法化の路線の決定による権利者の勝利に終わってしまう。相手のロジックを打ち破るロジックを、公平な視点から一つ一つ構築し、さらに自分の主張するロジックの正当性、客観性を強化、構築していく必要があるだろう。感情論や立場によってあらかじめ意見が決まっているモノ同士の掛け合いは不毛だ。
まぁこれは当然の話ではあるんですけどね。まず何を考え、していかなければの前提を確認しておかないと、次の段階に進めない。
まず、yahooの記事による意見のやり取りの中で、この部分。
『なぜ「違法化」が必要か
 「違法サイトからのダウンロードを、30条の適用範囲から外すことは不可避だろう」と文化庁の川瀬室長は話す。その理由として、(1)違法サイトからのダウンロードで、正規品ダウンロード市場を凌駕する規模の流通が行われ、権利者が経済的不利益をこうむっている、(2)P2Pファイル交換ソフトによる違法配信は、アップロードしたユーザーの特定が難しい場合があり、送信可能化権だけでは十分に対応できない、(3)国際条約や先進諸国の動向を見ても、ダウンロードは違法化すべき――といった理由を挙げる。
●「ネットはダークサイド」と映画製作者連盟・華頂委員
 津田委員は反論する。「確かに違法着うたによって経済的不利益は出ているだろうが、それでも着うたフル市場は前年比2倍ペースで伸びている。レンタルCDからリッピングすれば、安価に着うたを作成できる環境もある。そんな中で違法ダウンロードを30条から外しても、音楽の売り上げが5倍・10倍になることはないだろう」
 「(違法サイト上などでは)無料で見られるからこそ見ている人が大半だろう。そういう人がDVDを買ったり、映画館に足を運ぶだろうか。コンテンツの『利用規範』としてダウンロードを違法化する効果はゼロではないだろうが、副作用もある」(津田委員)
 日本映画製作者連盟の華頂尚隆委員は「米国の調査会社の2005年に、映画の海賊版被害が日米でそれぞれ、年間400億円あるという試算を出した。動画共有サイト流行前の当時ですらそうなのだから、今は増えているだろう」と、被害の大きさを強調する。
 華頂委員はさらに言う。「海賊版駆逐の王道は、海賊版とあまり変わらない価格で、正規品と同じ経路で流通させること。だがネットでは正規品が流通しない。ネットはダークサイドで、全く別世界」
 「例えば、動画共有サイトに人気映画がアップロードされるとユーザーから賞賛の嵐が起きる。まるで、(悪徳商人から盗んだ金銭を貧しい人に分ける)ねずみ小僧のような扱いだが、映画製作者は悪徳商人ではなく、善良なクリエイターだ」(華頂委員)』
争点はいくつかある。
1権利者は本当に経済的不利益を被っているのか。どれくらいの被害額なのか。
2国際条約や先進諸国の動向について
3華頂委員が述べている米国の調査会社の試算は現実の即したデータであるか、どういった算定によって出されたものかの検証
4華頂委員の言い方を見る限りでは、P2Pに限らず、ニコニコ動画youtubeの規制も行うべきといった論調になっている。たとえばニコニコ動画で著作物を使ったコンテンツを一切アップロードできなくなった場合、どれほどの経済的、文化的損失となるか。
5善良なクリエイターであるのはそれはそれでいいとして、彼らも納得するようなビジネスの仕組みの代替策があれば良いという話でもある。
私の視点は二つ。4,5のロジックを崩そうとしている。
 (5のロジックに対する反論)
 極論、クリエイターと消費者が納得する形があれば良い。中間搾取者にマージンを与える必然性はない。彼らは既得権を守ろうとするだろうが、それを論破するほどの効率的なコンテンツの流通とビジネスモデルについて考えなければならない。Webの普及によって小売や卸業者など、数々の仲介がある程度不要になり、直接取引ができるようになったように、コンテンツも消費者と権利者、創作者の直接取引がなされるようになれば、中間マージンがなくなるので権利者側も、一人一人からは今までより少ないコンテンツ料しか取れないが、マージン搾取がなくなるので結果として収入が変わらないのであれば納得し、消費者側も今までより安い形で手に入れることができるのではないか。コンテンツが安くなるということは多くのユーザに周知されることも意味するので、宣伝効果や波及、コラボレーション効果なども見込める。また、Webは様々な面で取引費用の削減をもたらしたのだから、従来より飛躍的に安く、かつ自由な形でのコンテンツ流通のあり方を考えていくべきだ。「現在の仲介業者ありき」で未来の話をするべきではない。
 (4のロジックに対する反論)
 日本は資源が乏しい国である。今、世界に誇れる日本の産業として、コンテンツ産業がある。アマチュアからプロまでを含め、これらのコンテンツ創作のコラボレーションの発現は、広い意味で日本国家の財産である。こういった作品の創作意欲、発表行為をそぐような行動をとることは、国家百年の計としては完全に逆行するもので、後世において愚物の謗りを免れ得ない行為ではないか。
私がクリエイターであるわけではないし偉そうなことは言えないが、ニコニコ動画などに見られる動画共有により、動画の合成、編集、学習によるクリエイターのレベルの上がり方は尋常ならざるものがある。それは互いに切磋琢磨するという場があることも一因だが、なによりある程度自由なコンテンツの相互使用が黙認されているということが大きい。だからこそコラボレーション動画などが次々と出ていくわけであり、映像コンテンツ同士を部分的に足したり引いたりかけたり割ったりする中で、様々な動画が生まれていく。それらはユーザの視聴数やコメントによって最終的に支持されるクオリティの高い動画が自然淘汰的に残っていく仕組みになっている。
コンテンツの保護、規制を行うことは、こういったユーザの自由な創作意欲を著しそぐもので、本来生まれるはずであった価値ある作品の芽を摘んでしまうのではないか。

委員会の人選などはこちらから 
文部科学省の委員会名簿 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/020/06042808.htm
ITMediaの記事  反対意見多数でも「ダウンロード違法化」のなぜ         http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0712/18/news125_2.html
埋まらぬ「権利者」vs.「ユーザー」の溝 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0711/28/news132.html
MIAU http://miau.jp/

何事もあきらめるのは簡単である。ほっとけばいいだけだからな。DL違法化になると、間違いなく消費者が今より窮屈に、権利者が権利を主張してくることは間違いないと思う。もともとWebはグレーの部分が多いのだから。なんでもDL違法化を論拠にされてしまうと正直こわい。なんでもすぐ二言目には権利者の不利益が、というが、権利者も今までと同じくらいの収入があれば文句は言わない。問題は著作権保護団体の既得権益にあるのではないか。これらの団体は、Web以前の時代的な経緯もあるので、そのすべてが悪かったとは思わないが、そろそろ別の形態の可能性を考えてもいいと思う。
今、何をすべきかはまだ見えないが、もうちょっと関心をもって、粘り強く見ていきたい問題だと思う。