情報で形作られるモノのイメージ

情報があふれている現代は、イメージ先行の時代だ。
Webは実物がないこともあり、「イメージ」の部分は重要な意味をもつ。選挙でも、イメージ戦は勝敗を分けるほどに重要で、あの人はこういうイメージ、あの企業はこういうイメージ、あのモノはこういうイメージなどという情報は、経済や政治を大きく動かす。
問題は、"たまたま"触れた情報によって、実物と違いイメージは大きな誤差があり得るということだ。時には正反対までの。
米大統領選で、ヒラリー氏がオバマ氏のネガティブキャンペーンを張っているという話を聞くが、まさに好敵手のイメージにどうやって泥を塗るか、それが大きな意味を持つことを理解しているからこその行動だろう。どれくらいうまくいっているかどうかは知らないが。
エントリで物事をうまく言えないとき、私はこういうイメージだ、とかこういうニュアンスだ、みたいな言い回しをして、読み手の理解を求めることがある。うまく言えないものだから、若干ごまかし、ぼかしている意味合いもある。イメージでモノを言おうとすることは、正しいことももちろんあるが、しばしば危険である。少なくとも、書き手の自信のなさはあらわれている。「イメージ」と言うことで免罪符をつけているのだ。
イメージはあくまでその実物の一部分、限られた情報を肥大化して全体を判断したものであることがほとんどだ。これは情報に満ち溢れた現代において、仕方がないことでもある。全体の情報まで網羅していては、世界の情報は多すぎて吸収し切れないから。群盲象を撫でるということわざに見られるように、日々の速報や情報はその物全体の一部に過ぎず、それを見ただけで本来、その背景や歴史を知らず、その物事を判断することは難しい。でもしばしば、その情報のみで人々は判断する。なぜなら、時間はないし、ぶっちゃけそんなに興味はないから。ちょっと豆知識を手に入れたなあ、くらいの気分である。受け取り手によって情報の価値は大きく違い得るが、大半の人にとって、情報は所詮その程度のものである。
ブログなどでエントリを書こうとするときは、なんとか事件の背景や別視点の情報なども探そうとはするが、やっつけなので、よほど普段から興味があったり、関係者でもない限り限界はある。情報のバイアスをなくそうという意味でも、やらないよりはずいぶん違うとは思うが。
だから、新聞やニュースの記事を書く記者が、たとえば否定的な方向へ世論を誘導したいと思う(もしくは"上"から命じられる)とき、記事にはそういう論調で書き、それを読んだ人々がそういった結論を出したくなるような、恣意的な記事の書き方をするわけだ。刺激的かつ、興味を引く見出しをつけて。まあそれでも、情報を見ないよりはいいことだから、そのことについて書かれた複数のソースを当たる方が、バイアスは少なくなるだろう。
議論やコメントにおいても、議論そのものの内容だけでなく、いかに相手を矮小化し、自己を高めるかが勝敗のカギとなることがある。発言者のイメージが、意見の説得力を大きく変化しうるからだ。ブログは公平に議論できるといいつつ、実際は、dankogai氏が言うことと私が書くことには天と地くらいの説得力の違いが出るわけで。それは今までの積み重ねや、社会的身分などその他諸々だろう。そこには、イメージも少しは含まれているだろう。
マスコミは連日、政治家がいかにバカであるかという論調で「国民の視点で」物事を語ることが多いが、それも所詮イメージである。実際に会うと非常にイメージが変わり、尊敬できるような人なのかもしれない。ただ、それはわからないし、そういったことを窺い知る機会もない。だが、そのせいだろうか、政治家はバカで、今意見を言っている俺の方がよっぽど正しく、偉いことを言っているのだ的な言説は良くみられる。
また、株が実勢の企業価値よりしばしば上がることがあるのも、イメージが一因としてある。
まあ、イメージ操作なんてどこでもやられていることで、今に始まったことではない。イメージをあげるためにために企業は広告はバンバン打つわけで、広告業界はウマウマなわけである。
ふと思ったことだが、イメージでモノを語ると、しばしば抽象的、一般的結論に帰結しやすいので、話としてはあんまり面白くならない。具体的な情報や、体験などをいれてはじめて、その情報は意味をもってくる。面白い記事、面白いES、面白いエントリ・・・何でも一緒だ。
イメージをどう利用するか、も大切だが、イメージに惑わされず、正しい情報を手に入れたいとまずは思う。Webはイメージをつくらせるような情報にあふれているし。情報はしばしば、事実を伝える内容だけでなく、イメージを形成するための情報も付加されていることが多い。新情報が出るたびに、企業など、発信者のいいように踊らされるのはシャクなので、もう少し賢い「受信者」になりたいと思う。Webは受信者優位の世界なのだから。