Webでの効率性と距離とのバランス

Webは便利だ。情報のやりとりやコミュニケーションを、空間を超えて行えるという点で。その中で互いに送るデータは画像や動画などさまざまだが、リアルタイムにおいて人が発信する媒体は、基本、テキストだ。(いちいち時間かけて絵や動画なんて作れるわけがない)
だが、物事を説明したり、議論するためには、テキストでは正直まどろっこしい。もっとスムーズにコミュニケーションしたい。キーボードでカタカタ打っていく速度に限界がある。
音声や映像データを利用したTV電話やライブチャットskypeを使うと、もっと複雑な話題の議論や取り決めを行えるのだが。
テキストコミュニケーションでも対面で話すのと同じような情報を、「時間をかければ」送ることができるというワルサーさんの研究があった。2chニコニコ動画のコメントは、ほかのサービスの掲示板サービスのように非同期という形で解決している。
twitterは同期性がある分、つながりをあえてあいまいにすることで問題を解決している。ニコニコ動画twitterのヒットはこの”あいまいさ”をうまく取り入れていると思う。ニコニコ動画は「いつ、コメントしたのか」「誰がコメントをしたのか」をあいまいにすることで、非同期という本来すれ違った状態をぼかしている。twitterは「つながり」をあえてあいまいにし、その分多くの人とのつながりを演出することでぼかしている。
人と人が対面でコミュニケーションする形がもっとも一般的なコミュニケーション形態だが、Webではそれができない。相手の顔や表情をみたり、声を聞くことはできないのか。
いや、すでに技術的にはできる。Webカメラskypeをつかえばいい。だが現在使っているのは一部の人だ。なぜみんな使わないのか。理由としては、Web上は全世界の人とつながっている状態であり、アカの他人とうまくコミュニケーションをすること、自分の顔や声などの情報を与えることに抵抗を感じるからだ。
また、声や表情といった人間の「生物的な」情報を与えることは、テキストのみの時は本来可能であった「ほかの誰かを演技」しづらくなる。Webの魅力のひとつは、仮面をかぶって好きな行動をとれることなので、それができなくなるというデメリットもあるだろう。
今日、テキストを使って、さまざまな議論や取り決め、説明などを逐一しているのを見ていたが、正直時間がかかりまくってまどろっこしかった。Webにずっといられる人ならともかく、日々仕事などがある人はとてもそういった時間ロスを容認しづらい。その点skypeだと声が伝わることで、一分あたりに伝えることができる情報は明らかに増える。だが、距離が縮まっていく上記のデメリットが生じてくる。
人間の生物的外見は平等でない。性差をはじめ、遺伝的な相違は先天的なもので、どうしようもない。だが、心と意思は、すべての人々が持つ平等なものであり、そこから生まれてくるテキストは内容本位でみられるべきである。レッテルや先入観をもってテキストを見るべきではない。そういう意味で、テキストのみによるコミュニケーションはすばらしいとは思うが、もっと複雑な内容や情報を説明も含めてやりとりする時は、必要に応じて音声や映像情報などを互いに伝えていく必要が、でてくるかもしれない。
光回線がより普及し、行政サービスや介護サービス、在宅勤務などがWebを通じて行われる時代になると、情報をより多く伝える状態にするか、相手と距離をとるべきか。人によってこの距離に対する感覚が違うがゆえに、Webでの効率性と距離とのバランスは、これから考えていかなければならない問題となるだろう。