2chとニコニコ動画のコメントの違い 

ニコニコ動画2chに一日にどれくらい書き込まれているかは知らないが、相当多くのコメントが書き込まれているだろう。しかし、二つのサービス内でなされているコメントの内容は、類似する部分と相違する部分がある。何がどう違うのか。
類似点としては、くだけた表現や、ネタ的なコメントがあること。もともとユーザがかぶっている部分もあるし、これは驚くことではない。
問題は相違点である。2chは議論やチャットなど、相手を意識したコメントが多いのに対し、ニコニコ動画は動画に対する反応や批評、弾幕や空耳、職人コメが、コメントの多くの割合を占める。批判こそ散発的にはあるが、動画内で議論したり喧嘩したりしているものはまれだ。むろん0ではないが、2chよりははるかに少ない。
2chのスレは1000ごとだが、動画だって5分以上だとコメントが1000まで見える。2chと同じようなコミュニケーションが展開されていもいいではないか。でも、そうはならない。なぜか。
IDの有無によるものか?いや、2chはたとえIDがなくてもある程度議論にはなる。なりすましが多くなるだけで。
答えはなんだろうか。私なりに考えてみる。

ニコニコ動画のユーザも本当はわかっているからではないだろうか。ニコニコ動画内に流れている1000のコメントが決してリアルタイムにコメントされているものではないことを。議論やチャットをしかけても、答える相手が「今、この時」向こうにはいないと思っているからである。反応を求めても、返ってこなければむなしいだけである。別に実際にみんなで「今、この時」見ているわけではない。そう見せているだけである。システムが。
では、コメントの何がニコニコ動画のユーザをひきつけるのか。「今、この時」みんなで見ていないことはわかっているが、「今、この時」みんなで見ているような気分にさせてくれるから面白いのである。

ニコニコ動画は、Webの一つの特性である「蓄積」を実にうまく利用したシステムといっていいだろう。現実の生活においては、声や感情はその場限りで消えていくものである。しゃべっている状態を1、何もしゃべっていない状態を0とおいて見ると、
0(しゃべっていない状態)→1(声を発した瞬間)→0(しゃべり終わって静かに)となる。
世の中には無数の「1」が渦巻いている。ニコニコ動画は、その「1」をそのまま凍結し、1000にまで高めているのである。だから盛り上がっていて、面白いのである。
ニコニコ動画はその「瞬間の盛り上がり」を常に1000の状態でキープして言っていいだろう。通常の1000倍の盛り上がり!とまではいかないが。
実際、どれくらいの人数で見ている(ように見せているの)か。どれくらい盛り上がっているのか?
ここからは目安である。10秒に1回人はコメントを一言しゃべるとしよう。動画は10分のものとしよう。すると、1000÷600x10=16.6666・・・約17人で動画を見ていることになる!!それは楽しそうだな・・。常に、おしゃべり自由のミニ映画館で映像を楽しんでいるようなものである。
最近、16人くらいでワイワイがやがやと楽しむような機会が少なくなっていることもあって、よけいそんな賑わいが恋しい。たがいに気も使わず、十分な距離をとっていながら、かつ、みんなでコミュニケーションを楽しむ。これぞまさに「ニコニコ」動画である。